母とパン
小学校の時、同じクラスの仲の良い子が小説を書いた。
ストーリーは覚えていないのだが、フィクションで小学生の僕の目にはめちゃめちゃ格好良く映ったのは覚えている。
それ以来、何回か小説を書こうとして、5ページ程で断念。まあ、構成も考えずに行き当たりばったりで書こうとするので、当然の話ではある。
本を読むのは特別好きな訳ではないのだが、面白い本にハマると必ず一気に最後まで読み終える。
クラスの子が小説を書いた時期に祖父が死んだ。最後に会った病室で、彼が読んでいた本をくれた。
山岡荘八の「織田信長」全五巻だった。
結局この本はフランスに来るまで、一年に一回は読む!という大ヒット作となった。
もともと日本史マニアだった僕。特に戦国時代の武将達の頭の良さに惹かれていた。
大人しくしていても攻められれば潰される。強くなるしかなかった彼らが、力ずくではなく頭を使い、戦わずして城をとっていく様子は読んでいてずっとわくわくしていたのである。
もう一つの大ヒットは松岡圭祐の「千里眼」。
ここ一年くらいの作品は読んでいないが、凄い勢いで本を書き続ける人である。
この作品も何回も読んでしまうほど引き込まれてしまう。
凄い作家は人に想像させる文章を書く。
そして文章が「素直」に心に入ってくる。
最近仲良くしていただいているお友達のひとりで渡辺靖さんという人がいるのだが、ここに彼が書いたエッセイで2009年のJAL海外生活エッセイコンテストで最優秀賞を受賞した作品がある。
僕は直接彼を知っているわけだが、彼の素晴らしい人柄が映し出されているとても良い作品。
タイトルは、「母とパン」。
フランスでも何人かこういう人を知っている僕は心から共感を覚えた。